税務調査について


その2





違法性のある税務調査



ほとんどの税務調査はほぼ合法的に 行われていますが、中にはこの様な違法性 の強い税務調査も行われております



  リョーチョー調査とは
 リョーチョー = 国税局資料調査課(略称 料調)

この資料調査課が行う税務調査をリョーチョー調査と呼んでいます 
 リョーチョー調査とは何か
 1 無通知で会社や経営者の自宅に複数の調査官で一斉に調査を着手 
 2 帳簿等の調査は後回しにして、まずは経営者やその家族、経理責任者といった人達の机や金庫・バック内を現況調査(先のページ参照)して脱税事実の証拠品集めに全力をあげる、といった調査法をとる 
 3 もちろん捜査令状無しの「任意調査」であるが、納税者には如何にも「強制調査」であるかの様に誤解させるべく、わざと高圧的な態度で調査を実施する。
納税者を怒鳴りつけたりして納税者を畏縮させ、私物を調査したり寝室内まで調査を行う場合もある。
会社の経営に全く無関係な女子事務員のハンドバックの中まで調べて問題となった事もあり。 
 リョーチョー調査の問題点
脱税容疑が固まって裁判所の捜査令状により行われる査察調査(マルサ)とは違い、脱税事実やその嫌疑も無い納税者にも実施される事
 2 任意調査である事を意図的に隠し、納税者には強制調査であるとわざと「誤解」させる調査手法は明らかな行政の手続違反 
事前通知無しでの無通知調査のため、会社側の都合も一切無視して強引に調査を行うやり方は会社の日常業務に大きな影響を与える業務妨害とも言える。
当然に関与する税理士にも何の連絡も無く突然に調査が行われる事となり、税理士の調査立会権も侵害する調査法。 
 4 多人数の調査官達で少数の経営者達を精神的に追い込むといった調査法。
そのために必ず大人数で調査を行う。
そして明らかなプライバシー空間である寝室や子供部屋にも平気で侵入する。
 5 この調査方法は、決して国税局資料調査課(料調)のみが行っている訳ではなく、この調査手法などが税務署の研修などでも広く紹介されており、そのために料調が税務署に所属する職員を「研修」として調査に同行させる場合もある。
つまり国税局推奨の調査方法という位置づけであり、よって国税局が絡まない税務署独自の調査でもこの調査方法が広く実施されている。
 何でこの様な調査が堂々と行われるのか?
 課税庁の本音は・・・

調査で仮に少々の行き過ぎ事実があっても、
脱税の事実さえつかんでしまえば、後で
問題化することは無い


つまり・・・「弱みさえ握ればもう問題にはならない」
真面目に申告をしている納税者であっても、大勢の調査官に突然に調査に来られて、そして如何にもマルサの様な強制調査そのものといった調査を受けますと、誰でも心理的に畏縮してしまうのは仕方がないことです。
人間、一つや二つは間違いや判断ミスがあって当然。
特に悪意など無く真面目に決算をしてきたつもりでも、数年前からの決算内容を改めて調査されれば、どんな企業でもいくつかの問題点は出てくるものです。
大勢の調査官に取り囲まれて、如何にも犯罪者であるかの如くに扱われ、そして実際にはたいしたことの無い経理ミスや記帳漏れなどを、さぞ重大な犯罪的行為でもあるかの様に大袈裟に指摘されますと、ほとんどの人はこの様な乱暴な調査法をとがめるよりも、問題点として指摘された部分を謝罪して調査を終わらせようとするのは当然でしょう。
課税庁からすれば、この「弱みさえ握ってしまえば」、もう納税者側から調査方法について抗議される心配も無いし、税額の最終決定段階で少々恩着せがましく「オマケ」などをしてさえおけば、抗議どころか感謝さえされる事もあるという訳です。
そのためにこの様な明らかに違法の調査が全国的にかなりの件数行われてきたにも関わらず調査法が問題化したのはその中のごく一部分でしかありません。 
国税通則法に調査手続が制定された後もこの様な調査は無くなっていない様です。
確かに課税庁側も、以前よりはこの様な乱暴な調査はやりづらくなったらしく、以前ほどには目立ったものではないのですが、でも税理士が関与していない業者や、或いは関与をしていたにしろ税務署OBとかで調査方法に文句を言う様な税理士じゃない場合などは、未だに以前の様な調査が行われていると聞きます。
国税局資料調査課(料調)ではなく普通の税務署の職員であっても、未だに事前通知も無しにいきなり調査に来る例もあります。 
 リョーチョー調査の一例(北村事件)
北村裁判は、1992年に大阪国税局と下京税務署(京都)により合同で実施された国税局資料調査課による調査(リョーチョー調査)で、あまりにも非常識な調査方法もあって全国的に注目を集めた事件となりました。
この事件は裁判で争われる事となり、最終的にはこの調査方法が違法と判断され、国側の全面敗訴となりました。 

以下、事件の経過を簡単に記載します。
 1 1992年、個人で衣料品店を経営する北村氏(青色申告)の京都店(本店)と大津店の二カ所の店舗に同時に突然調査官が来て税務調査を開始。
調査官は大阪国税局資料調査課5人と下京税務署所得税担当職員3人の計8人。
突然の調査開始だった事から事業主である北村氏は仕入のために大阪に出かけて留守だったため店員は調査を後日にする様に頼むが強引に調査が開始された。、 
 2 ○ 女性従業員の個人のバックをひったくるように奪って内部を確認
○ 本店2階の居宅に駆け上がって寝室のタンスの中を掻き回す
○ 客の前でレジの中を調べ、あまりの騒動に店内にいた客が逃げ去る 
 3 この異常な調査のやり方に北村氏は税務署に謝罪を要求。
更に国家賠償法により提訴する。 
 4 税務署は北村氏に対し課税処分を行う。
1 青色申告の取消処分
   (帳簿等を調査官に見せなかったという理由)
2 推計課税により多額の追徴税額を更正処分し加算税を賦課決定 
 5 北村氏は税務署に対し、上記処分について不服申立を行う

北村氏が調査官に対し帳簿を見せなかったのは、調査の前にまずは行き過ぎた調査のやり方を謝罪せよ、と要求したためです。
人間として当然な要求だと思うのですが、しかし税務署側は北村氏の求めた謝罪要求は無視し、報復とも取れる多額な追徴税額の課税処分でこれに答えてきました。
 
 6 下京税務署長は北村氏が申し立てた不服申立を棄却。 
 7 1995年に青色申告取消処分について京都地裁に提訴
 8 同年、国家賠償請求訴訟勝訴(京都地裁)
1998年には控訴審でも勝訴。
国側は上告しなかったため高裁での勝訴判決が確定。 
 9 青色申告取消処分取消請求事件でも勝訴
国側はこの判決についても控訴をせず北村氏は二つの事件で勝訴。 
 10 裁判所の判決を受け、青色申告取消処分や更正での課税処分の全てが取り消し。

推計課税は青色申告者には認められていないため、青色申告取消処分が取り消された場合には自動的に課税処分も全て取り消しとなります 



「かもがわ出版」2001年4月10日発行
「裁かれたリョウチョウ 税務調査に名を借りた人権侵害」
の内容から記載しました


この事件の問題点は調査のやり方だけではない 
国税庁は法人会・青色申告会といった団体を「協力団体」と称して優遇する一方、民主商工会や土建組合といった団体は「反税団体」だとでっち上げ、税務調査でも露骨な差別を行っているようです。
特に民主商工会に対しては、税務署ではその会員数や加入・脱会といった情報を日常的に集めており、税務調査も民主商工会員に対しては専門の部署を設置したりベテラン職員に担当させていると聞きます。 
北村事件の北村氏も民主商工会員だった様です。
民主商工会員にはこの様に「見せしめ」的な高圧的な調査が行われる事があり、その様な調査を行う事で会員が増えないように監視していると聞きますが、この様な事が本当に行われているとなると、憲法も人権も空論に過ぎなくなってしまいます。
日本は本当に法治国家なのでしょうか?。 
  リョーチョー調査の目的
では何故この様な違法スレスレ(私は違法そのものだと思っていますが)の調査が何の目的で行われているのしょうか? 
 1 多額の増差所得をつかむ事

当初申告した所得金額と、税務調査で把握した金額との差額は増差所得と呼ばれ、この額が申告漏れの所得金額という事になります。
この増差所得の大小が調査官の調査能力の評価になり、そのために調査官は増差所得を少しでも多くあげる事に四苦八苦しているようです。

料調調査の最大の目的はこの増差所得を多く上げる事にあります。
実際、資料調査課の実施する調査の平均増差所得金額は税務署独自の調査の平均値とはかなりの開きがあるものと言われております。 
 2 重加算税の賦課

増差所得と並んで調査官の評価のポイントとなるのが重加算税の賦課件数です。
重加算税というのは、前のページでも触れた様に、納税者が所得を「仮装隠蔽」していた時に賦課決定される加算税ですから、重加算税の賦課事実というのは調査官が納税者の不正計算事実を発見した事となります。
「全ての納税者は脱税を行っているはず」「叩いて泥が出ない企業はない」といった性悪説を以て調査をしている調査官に取っては、納税者の不正事実を如何に発見できるか否かというのが職務上の使命となっており、そんな調査官に取って重加算税の賦課は当然の目的です。
料調の調査ではかなりの割合で重加算税の賦課決定が行われていると聞きます。 
 3  調査手法の研修

絶えず増差所得を追求して重加算税の賦課事実を追いかける、という国税庁に取っては真の調査官ともいうべく職員を育成するために、このリョーチョー調査は若手職員の指導に使われる事もよくあるらしいです。
上に記載した北村裁判の事件でも、大阪国税局資料調査課5人だけではなく下京税務署個人課税部門職員3名が「実地研修」として加わっています。

この様に、資料調査課の調査に税務署の若手職員などが同行して調査の実地指導を行うといった事案は「指導事案」と呼ばれている様です。
税務調査にはかなりの経験も知識も能力も必要でしょうから、まだ調査に慣れない若手職員を調査に同行させて実地に教え込む、といった事は必要でしょうし何の問題も無いのですが、困るのは違法そのものの事前通知無しの調査や現況調査などをも指導しているという事です。
事前通知無しでいきなり複数の調査官で威圧的な調査を行うという料調調査。
このやり方は国税局査察部が行う強制調査(マルサ)と同じものなのですが、マルサが裁判所の令状を取っているのに対して料調は令状無しの調査というところが違います。
裁判所の発行する捜査令状も無いのに、如何にも納税者に強制調査だと「誤解」させて実施する違法な現況調査が合法であるはずはありません。

この様な調査法は、決して資料調査課職員達の「勇み足」によるものではなく、国税庁が長年に渡ってこの様な調査方法を「推奨」してきた結果によるものです。

平成25年より国税通則法で調査の手続が法文化され、無法地帯だった税務調査にようやく法律というものが届くようになりました。それまで好き放題に税務調査を行ってきた国税庁に取ってはかなり調査方法が制約される事になったようです。しかし料調調査が禁じられたかというとその様な事は無く、現在でも事前通知無しの調査、現況調査は同じように行われていると聞きますし、国税局には今も資料調査課という部署が存在をしております。。

多額な増差所得を求められ、重加算税賦課決定事実が欲しい調査官に取って、料調調査、またはこの料調調査を真似た調査方法というのは実に魅力的で効率が良いものである事は間違いないようです。 





 無予告で突然行われる税務調査
 前のページにも書きましたとおり、税務調査は国税通則法第74条の9の規定により、事前通知が前提となっております。そして11項目(前ページ参照)の法定通知事項を全て行った上で調査が実施されることとなります。
 しかし前もって調査日を事前に調整して決めてから行うというのは、国税局や税務署といった税務官公庁には仕事の効率からして面倒極まりないものらしく、なるだけ事前通知無しに調査を行おうとしている様です。 
 事前通知を省略して無予告で調査着手できる規定ももちろん存在しております。国税通則法第74条の10がその規定なのですが、この規定はあくまで例外であり、無予告で税務調査を行うには法的にはかなり高いハードルが課せられています。
 無予告で調査を行うためには、もし事前に通知をしたら、調査対象の納税者が帳簿書類を破棄したり隠匿・偽造したりする怖れが「合理的に推認」される場合のみに限定をして例外規定が設けられている訳であり、この「合理的な推認」ができない以上は必ず事前通知が法的に義務づけられている訳です。
 国税通則法にこの事前通知の義務規定が設けられる以前は無予告の税務調査が横行していました。現金商売だからというだけの理由で無通知の調査を受けざるを得なかった飲食店や小売店も数多いと思います。
 税務署等の言い分では、現金商売の店は無予告で調査を行わないと実態がつかめないからという訳ですが、この程度の理由では無予告調査の必要性が「合理的に推認」されているとは言えないことは国税庁自身も認めているところです。
 売上をごまかしているらしいといったタレコミがあったこと、過去の調査で脱税の履歴があった納税者だから、等々の理由では法が規定する「合理的な推認」には当たりません。   
国税通則法の事前通知義務規定は平成25年より新たに設けられた法律です。そしてこの法律が制定されたことにより国税局や税務署は間違い無く仕事がやりづらくなったと本音を漏らしています(実際に調査官から聞きました)し、表向きはかなり無予告調査は減ってきた様にも見えます。しかしうるさい税理士が関与していない事業者や、事前通知規定など知るよしもない個人事業者などには今でも無予告で税務署員が来たりしていると聞きます。 





  税務調査十カ条
 1 突然、税務署員が来ても対応できません。
突然の調査は断りましょう。

税務調査には事前通知が義務づけられています。 
 2 税務署からの電話には、あわてずに用件と氏名を聞き、すぐに税理士に連絡しましょう。

税務調査の事前通知の場合には税務署は11項目の法定通知を行う義務があります 
 3 税務調査は任意調査です。
納税者の明らかな承諾が必要です。

税務調査は任意調査であり、納税者の承諾と協力が前提であることは国税庁も事務運営指針で認めております 
 4 主張すべきことは主張し、即答できないことはよく調べてから答えましょう。

その場しのぎの回答は危険です。十分に確認をしてから答えましょう 
 5 金庫・机の引き出し・パソコン等を勝手に調べることはできません。

任意調査は納税者の承諾が前提です。調査に必要なものはちゃんと用意してお見せすれば良いのであり、調査官が金庫やパソコンの中を勝手に調べるには裁判所の発行した捜査令状が無い限りは違法となります。 
 6 伝票、帳簿はもちろんパソコンのデータやメモ用紙一枚でも承諾なしに持ち帰ることはできません。
コピーも同様です。

税務調査では調査官は納税者の所有物を勝手に持ち帰る事はできません。もし持ち帰る場合には、調査官は納税者にその理由を説明して納得してもらった上で、預かった書類の明細を発行した上で持ち帰る事となります(留置と言います)。
またコピーも勝手に行う事はできません。
 
 7 税務職員は全体の奉仕者です。
非常識な言動はたしなめましょう。

公務員法第96条に規定されています。もし威圧的な言動をする調査官がいた場合には直ちに上部機関に苦情と抗議をすべきです。 
 8 呼び出し、お訊ね文書には法律上の強制力はありません。

お訊ね文書は税務調査で行使される質問検査権で行われるものではなく単なる行政指導での行為に過ぎません。行政指導として行われているものは、法的にはアンケートと同じもので任意のものであり、回答をしなくても特に罰則はありません。行政指導への未回答を理由に納税者に不利益を与える様なやり方は法律で禁じられています。アンケートに回答が無い場合は税務調査を行う等々といった脅しに近い内容を書いてある文書もあるらしいですが、それらの文書は明らかに法を逸脱しています。 
 9 取引先や銀行などへの承諾のない反面調査は守秘義務に違反する上に営業妨害です。
すぐに抗議しましょう。

「反面調査は客観的にみてやむを得ない場合に限って行う」旨の記載は税務運営方針にも事務運営指針にも定められています。「客観的にやむを得ない」という意味からして納税者側にもある程度「仕方がない」と納得させる程の理由が必要です。 
 10 修正申告の勧奨は強制ではありません。

修正申告書の提出は納税者の不服申立権を放棄するものです。よく考えてから提出する様にしましょう。また提出を拒否した事で税務署が職権で課税処分をしてきても、追加で納める納税額には差が無いはずです。 

この十カ条は税経新人会全国協議会が公開をしています。
この十カ条は2016年版で、毎年1月に新しい十カ条が公開されますが、基本的には平成25年の国税通則法改正以降は内容に変化はありません。

税務調査に関するアドバイスをまとめたものであり、赤書きの部分は筆者が勝手に説明文をコメントとして書き加えた部分です。





 もし無予告で税務署が来た場合は?
国税通則法に税務調査手続が規定された後は、さすがに無予告で調査に入るといった事はやや少なくなった様な気がしますが、でもやはり無通知での突然の調査が根絶された訳ではなく、今も多くの納税者が被害に遭っている様です。

これは国税通則法で事前通知無しの調査が完全に封じられた訳ではなく「例外規定」として残ってしまった・・・、つまりは中途半端な改正が税務調査に様々な法の抜け道を作ってしまったというのが原因です。

課税庁は「例外」を連発して以前と同じような無予告の調査を実施し続けています。
「例外」がいつのまにか常套手段になってしまう危険性があります。

「例外」というのは、常識的にみて納税者側に於いてもある程度納得できるだけの弱みがある事が前提だと思うのですが、課税庁側は調査の着手に関しては絶対にその理由を明かしませんし、これでは「例外」規定を自由に好き放題に操れる事も可能となります。 
もし事前通知も無しで突然税務署が来た時ですが、上の「税務調査十カ条」にもある通り、決して「慌てない」「焦らない」ことが一番重要です(難しいですけどね)。

まずは何の用件で来たのかを良く聞く事。そしてすぐに関与税理士にその旨を連絡を取ってください。

もし用件が税務調査だった場合には、必ず調査は後日にしてもらう事。絶対にその当日には調査に応じてはなりません。これは関与税理士がいてもいなくても同じです。そして法定通知の11項目(前ページ参照)が確実に実施されているかどうかを必ずご確認願います。もし1項目でも欠けた場合にはその調査は手続き的に違法なものとなりますので、必ずこのチェックは行う様にしてください。

調査官によっては、調査は後日にする事は応じておきながら、その日のうちに取引銀行や主な取引先などを懸命に聞き取りをしようとします。でもこの様な質問は税務調査が始まってから聞くべきでしょうし、この日の時点では何も答えないでください。
金庫の中や机の引き出しの中を見せてくれれば今日はすぐに帰るから等々と言う調査官もいますが絶対に応じてはいけません。

担当調査官の氏名(フルネーム)と所属は聞くだけではなく必ず身分証明書を確認する様にしてください。顔写真付きの身分証明書は税務調査の際には必ず携行する決まりとなっていますし、納税者からの求めがあった場合には調査官は提示をする義務があります。
(ニセ税務署員のニュースは毎年の様にありますから要注意です)

絶対に余計な事は口にしない事。単なる世間話かと思って応じていたら後日になって思わぬ課税情報となっていた事に気付く事もあります。

税務調査の際には必ず税理士さんに立ち会ってもらった方が間違いがありません。
関与税理士さんがいない場合でも税務調査段階でお願いをして立ち会ってもらった方が安心ですし後々の間違いがありません。但し税理士さんの中には税務署側ベッタリの方も多いですから、依頼する税理士さんは周りの評判などを聞いてからの方が良いかも。
 
 とにかく調査は納税者の同意が無い限りは実施できません。
無予告でいきなり訪ねて来て調査云々と言われても絶対に応ずる必要はありません。
一旦はお引き取りいただき、税理士さんと日時調整をした上で改めて調査に来ていただきましょう。
他人宅を訪問するわけですから、最低限のルールとマナーはお役所にもしっかり守ってもらうべきです。






 威圧感を与える「質問応答記録書」
 「質問応答記録書」とは、事実関係を納税者と調査官との間で質問応答方式で作成される行政文書です。
 調査官が税務調査を行った結果、課税処分自体や重加算税の賦課決定等の事実関係に客観的証拠が乏しいと判断された場合、後々の不服申立手続に備えて課税庁側の都合だけで作成されるもので、応答形式で作成された文書に納税者は最後に署名押印を求められますが、この書類の写しが納税者に発行されることはありません。 
 そもそもこの記録書作成には法的な根拠はありません。国税庁だけの事務上の都合で発案され全国の課税庁の統一様式となったものです。
 国税通則法第74条の2によると、調査官は納税者に対し、必要のある時に質問して帳簿書類その他の物件を検査し、当該物件の提示若しくは提出を求めることができる旨は規定されていますが、応答記録への署名押印までは応ずる義務規定はありません。よって署名押印を拒否しても罰則はありません。 
 応答形式の記録書ですが、そもそも「質問てん末書」から発展したもので、書類のフォーマットもこの質問てん末書に近い様式となっております。
 質問てん末書は旧国税犯則取締法による脱税事件で使われていた書式であり、後々の不服申立手続から訴訟までを考えて生まれた書式ということもあって、警察の調書や検察庁の検事調書を思わせる、つまり犯罪捜査で使われる様式を準用して作成されたもので、如何にも威圧感のある書類です。
 この様な文書を密室で作成される訳ですから、それこそ調書を取られる納税者は犯罪者にでもなった様な心境に追いやられます。 
 当事務所としては、この様な納税者に威圧感を与え、正に犯罪者心理に追い込む様な記録書作成には応じてはおりません。税務調査で、国税通則法第74条の2による質問や帳簿書類の調査等には税理士として積極的に応じますし協力もしますが、法的裏付けもなく、ただ国税庁内部の都合だけで作成されたこの様な文書作成にまで応ずる義務はないものと感じますし、何よりも納税者の心理を考えた場合にはとても協力は出来かねます。
 記録書作成は納税者が調査官から質問を受けて答え、その後で記録書を作成して目の前でそれを読み上げます。そして答えた内容に誤りがないかどうかを質問され、誤りが無かったらその場で署名押印(拇印の場合もあり)を求められます。
 もし署名押印を拒否すれば、拒否の理由を事細かく聞かれ、そして記録書には「回答者○○は次の様に述べて署名押印を拒否した」と最後に記載されます。
  そして作成された書類のコピー交付を求めても拒否されます。納税者としては一旦持ち帰った上で数日間検討してから署名押印をすると言っても断られると聞きました。
 とにかくこの記録書は課税庁側の都合だけで作成されたものです。記録書作成によるメリットは納税者側には全く無く課税庁だけにあります。その課税庁の都合というのも、重加算税の賦課決定という通常よりも重い処分を与えたいのに少し証拠が弱いから、といったことで作成される事が多く、納税者に取ってはデメリットしかありません。 
 記録書作成の際の納税者の緊張は相当なものでしょう。威圧感を与えることも目的の一つなのかどうかは存じませんが、だいたいは国税局や税務署といった課税庁の庁舎内にある個室(密室)で作成されることも多いらしいです。
 そして一問一答式で質問事項も答えた後でその内容を目の前で読み上げられる訳ですが、録音している訳でもない会話を全て思い出すのも困難ですし、会話の微妙なニュアンスなどは課税庁側の都合の良い風に勝手に作成されることも多い様です。 
 もし意に反して質問応答記録書を作成された場合には、必ず問答内容を会話のニュアンスも含めて細かくチェックをしてください。印鑑を押印すれば記録内容は全て課税庁側の都合の良い記録となりますから押印は拒否した方が良いですね。理由は特に言う必要はありませんし、もししつこく聞かれれば法的根拠の無い文書だからと答えれば良いでしょう。 
 押印を拒否しようが何だろうが、質疑応答記録書が作成された場合には必ずその国税局や税務署の情報公開窓口に行って、作成された質疑応答記録書の写しを請求する様にしてください。記録書作成の段階では写しの交付はしてくれませんが、個人情報の公開を申請することでこの記録書も読むことが可能なはずです。費用は数百円程度です。
 ご自分が話した内容よりも、かなり課税庁側に都合の良い様に記録書が作成されているのが分かると思います。中には自分に話した記憶が無い発言が勝手に「作文」されていたという事例もある様です。
 とにかくこの文書はお役所側のメリットだけで作成する書類なのですから、メリットの効果が大きくなるようにアレンジするのは想定されることです。 





 「調査」ではない「調査」
 課税庁は納税者に対して行使する「質問検査権」は、先にも(前のページ)書きました様に国税通則法第74条の2以降に規定されております。
 つまり
「国税庁、国税局、若しくは税務署の当該職員は」
「税の調査について必要のあるとき」
「質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、」
「当該物件の提示若しくは提出を求めることができる」の規定です。

 そして質問検査権を行使する場合には国税通則法第74条の9の規定により事前通知を行わなければならず、この事前通知は国税通則法第74条の10に規定する様に、事前通知を行った場合に帳簿書類の破棄や偽造等の怖れが「合理的に推認」される場合以外は必ず行わなければならないことになっていることも先のページに書いた通りです。 
 最近、課税庁側が調査の抜け道として考え出して頻繁に行っているらしいのが、文書による照会手続です。

ここ数年間の間に私のクライアントに対して届いた文書ですが、
「○○所得についてのお尋ね」
「申告内容についてのお尋ね」
「交際費についてのお尋ね」    等々でした。

 照会文書の名目は様々ありますが、全て納税者の決算や申告の中で、課税庁が内容を検討したい幾つかの勘定科目の内容を照会したり、また申告漏れの所得が予想される場合などに納税者に対して直接送付される書類です。

 そしてその内容ですが、家賃収入が申告されていないのではないか、とか、ある勘定科目について前年度と比較して増加した理由を書け、とかで、もちろん回答期限も書かれていますし、酷いのになると、過去3期分の帳簿を持って○月○日に税務署に出頭せよといったものもありました(これって照会ではなく呼び出しですよね)。 
 この文書ですが、平成18年から20年辺りから私のクライアントのお客様のところに届くようになり、この文書の法的性格がどうしても分からなかった事から、複数の税務署に対して法的根拠と回答の義務規定を文書で問い合わせたことがありました。

 私が文書の法的性格に疑問を持ったのは、もし質問検査権の行使が目的でしたら、納税者に直接送付するのではなく税務代理権を持つ税理士のところに送付すべきものですし、税理士を介さないで直接納税者に送付するのは違法だと思ったからです。
 また行政文書でしたら、必ずその旨の記載が文書上に無ければならないはずであり、つまり官公庁が国民に対して問い合わせを行うには必ずどちらかの法的根拠が必要であり、法的根拠が欠けた文書は怪文書と同じだと思ったからでした。

 そして税務署は、私の質問文書については、この照会文書は質問検査権の行使による文書ではなく、そして行政手続法による文書でもなく、つまりは単なる法的根拠の無い任意依頼文に過ぎず、つまり回答の義務も無い文書だと口頭で返答してきました。私は文書での回答を求めていたのですが、何故かお役所はこの様な国民からの質問文に対しては絶対に文書回答は行わず、この時も口頭で回答されました。

 しかし最近届いた文書には「行政指導として送付している」との文言が書かれている様ですから行政手続法による照会文書と考えて良さそうです。
 課税官公庁が納税者に対して行う質問ですが、その内容が決算や申告に関するものだったら誰がどう考えても質問検査権の行使でしょう。「税について必要がある時」に公務員が公務に従って「税の課税標準の算定に関する」質問をしているのですから、堂々と質問検査権の行使であるとすれば良いのに、何故かその表現は使いたくないようです。
 上に書いた様に、先に私が書面でこの文書の法的根拠と回答義務について質問した際の複数の税務署の回答では、あくまで「任意依頼文」に過ぎないから回答の法的義務はないとの返事でした。しかし照会文書のどこにも回答が任意であることは記載されていませんでしたし、回答期限まで書かれている文書は誰が見ても「任意」な文書とは思えません。日時指定の呼び出しなんて誰がどう考えても強制的なものでしょう。

 この照会文書も最近は「任意依頼文」ではなく「行政指導文書」であると明確に書かれるようにはなったのですが、あくまで回答は任意であることは同じです。行政手続法では行政指導に応ずるかどうかは完全な国民の任意な意志であり、官公庁は行政指導に従わなかった者に対して差別的制裁的な取扱をすることは法律で禁じられているからです。

 もし回答が無かった場合には税務調査を行うといった脅迫めいた文面の文書もあった様ですが、これは正に行政手続の違反行為そのものです。本来ならば文書への回答は任意であることを文面に書いておく必要があるのではないかと思います。 
 この文書にはかなりの違法な部分があります。

 納税者に対し質問検査権を行使して質問を行いたいのだが、その場合には国税通則法に規定する事前通知義務もあり、またその事前通知は税理士が関与する納税者の場合には税理士に通知もしなければならず、税務調査の件数を何とか効率的に稼ぎたい課税庁としては何とか質問検査権の行使という形ではなく業務を進めたい。

 質問検査権の行使といった扱いにしなければ事前通知も不要だし税理士に連絡する必要もなくなるから、質問内容としては明らかな質問検査権の行使であっても、そういう扱いにさえしなければ効率良く調査も行えるだろう。

 もちろん納税者には回答を強制するし、回答期限までに返信が届かなければ催促の電話もして100%の回答を目指す。

 回答の結果、もし所得に申告漏れ事実などが把握されたら税務調査に切り替えて調査1件完了とするし、こういう効率の良い方法を使わないと、少ない限られた定員で年間の調査予定件数のクリアなど困難だろう。


 私が勝手に判断したストーリーで根拠はゼロなのですが、おそらくこの様な考えで生まれたのがこの文書ではないかと思っているところです。事実、知り合いの税務署員から聞いた話では、照会文書の回答から何件かは税務調査に振り替えをして調査件数を稼いでいるとのことでした。

 調査件数のノルマがかなり厳しいものであることは別ページで紹介もさせていただいておりますから私も承知もしておりますし同情もします。しかし官公庁である以上は法を遵守した上で公務を行ってもらうべきですし、この様な安易な小手先のやり方で表面上だけ件数をクリアしようとするのはお止めになるべきでしょうね。

 どうも税務官公庁では、実地に調査官が納税者宅を訪問して調べるのが質問検査権の行使で、納税者に書面や電話で質問したり税務署等に呼び出したりして質問する、つまり税務署等の庁舎内で行うものは行政指導であると区分している様ですが、法律上は公務員が税の課税標準の算定過程を質問するのは全て質問検査権の行使という手続でないと行えません。
 お役所は違法なことは絶対にしないだろう、ということはあり得ません。法律を周知しているはずの官公庁だからこそ、勝手な法律解釈をしたりして、法律知識が薄い我々納税者を上手くコントロールしている様にも見えるのが税務官公庁の姿です。  





 遅れた日本の法的整備
納税者権利憲章とは 
納税者権利憲章とは、税務調査を受ける際の納税者の権利を定めたものです。
既に先進国では常識となっているもので、今では先進国では
  日本だけ が権利憲章が制定されていません。

お隣の国である韓国でも、1997年に納税者権利憲章が制定されており、日本は他の先進国から大きく遅れを取っているようです。 
納税者権利憲章のある韓国での税務調査 
権利憲章が制定される以前は日本同様に税務調査で色々なトラブルがあったらしいのですが制定後は激減しているらしいです。

例えば税務調査の事前通知ですが、調査の7日前までに文書で「税務調査事前通知書」が送付され、文書内には調査日時や期間、そして調査の理由や調査担当者等の情報が記載されています。日本の様にダラダラと長電話で通知する様な事はありません。
また調査自体の拒否権はありませんが、納税者からの調査日の延期は当然に可能です。

調査の結果についても日本の様な口頭ではなく文書で送付されます。

もし税務調査で納税者の人権侵害行為があった場合には「納税者保護担当官」という役職の職員の権限で調査中止命令が出されます。

一番大きな違いは、税務調査の基本が納税者を「誠実性の推定という立場で行う部分であり、日本の様に「納税者は必ず脱税している」といった性悪説での調査とは大きな違いがあります。
納税者の権利憲章をつくる会(TCフォーラム) 
TCフォーラム = Tax Chacter の略です。
納税者権利憲章の制定を目指すTCフォーラムは1992年に発足しました。

私たちの望んでいた「納税者権利憲章」の制定というものが、平成25年に国税通則法の改正という形で一部施行される事となりました。
確かに無法地帯だった税務調査に一定のルールが定められた等々の評価点もありますが、政権の変更などもあって法案の内容に国税庁側からの要望が一層強く組み入れられることとなり、その結果一番肝心な部分がかなり骨抜きにされてしまいました。

税務調査の事前通知義務に敢えて例外規定を設けたり、明らかに違法であろう現況調査に何の規制も行っていない等、国民が望んでいたものとはかなり懸け離れた内容に失望する納税者も多いはずです。

最低でも、お隣の国の韓国程度までは納税者の権利擁護の規定が欲しかったと思いますし、現在の状況では先進国の名が泣いています。国民の人権を守れない国に先進国の資格があるのでしょうか?。 
更に急がれる納税者権利憲章の制定 
国税通則法が中途半端な状態で改正されたことで、一時は制定にかなり前向きだった政治家の先生方の姿勢も以前ほどに真剣味が見られなくなった様な気がします。
政権が代わり、巨大与党の国家主義的な政策により、間違いなく税務調査は更に強権的になりつつある事が予想されますし、現在では消費税や社会保険料の負担増等で、特に中小企業の経営者は過去に無い程の資金究極状態に追い込まれています。
この様な状態の中で、納税者の人権を法的に保障する権利憲章の制定は、以前にも増して更に早期の制定が望まれています。 

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